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ー 水中ドローンと人 ー
講習受講生インタビュー 第2回(前編)

関西ペイントマリン株式会社 島田 拓真 様


取材日/2024年3月21日
聞き手・編集/mizubiyori 山下
撮影 /mizubiyori 中田

水中ドローンスクールmizubiyoriのこれまでの受講生が、どのように現場の仕事に水中ドローンを役に立てておられるかを伺う企画、

2弾として関西ペイントマリンの島田様にインタビューをさせて頂きました。(前回の兵庫県漁連 門田様のインタビューはこちら

前半では島田様のお仕事についての専門的な現場での水中ドローン活用の様子を伺い、後半の「水中ドローンの可能性」のお話では、

環境への配慮に基づいた国際的な動向を踏まえ、水中ドローンがより一層活躍する未来の可能性について語って頂きました。

おまけでは島田様の水中ドローン運用TIPSについて画像でのご紹介や、冒頭のアイスブレーク部分でのプライベートなお話では

島田様のアクティブな一面が伺えました。ぜひ最後までご覧ください。

ー 水中ドローンと人 ー CONTENTS 


ゲスト(講習受講者様)プロフィール

1.主な業務内容について

2.水中ドローンの活用について
3.水中ドローンの優れている点について


おまけ1 島田様の水中ドローン運用TIPS画像

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ゲスト(講習受講者様)プロフィール 

氏名 島田 拓真
所属 関西ペイントマリン株式会社
出身 大阪府池田市
年齢 30
趣味 釣り、スノーボード、キャンプなどのアウトドア

1.主な業務内容について

インタビューは関西ペイントマリン株式会社様の事業所の会議室にて行わせて頂きました。

本日はどうぞよろしくお願いします。


よろしくお願いします。関西ペイントマリンの島田です。

まず島田さまのお仕事について、主な業務内容をお伺いしてもよろしいでしょうか。

合わせて、御社の事業概要についてもご説明頂ければと思います。

はい、まず弊社についてですが、「関西ペイントマリン株式会社」という、関西ペイント株式会社の100%子会社となります。
業務内容としては、船舶用の塗料全般における開発・販売です。基本的にマリン関係の塗料はひと通り取り扱っています。
その中で私は「渉外技術員」として従事しています。



渉外技術員とはどういった仕事内容になるのですか。

まず、船舶用塗料は、大きく2種類に分類されます。一つは「防食(ぼうしょく)塗料」、錆びないようにする為の塗料と、 もう一つは「防汚(ぼうお)塗料」です。フジツボ、貝類、藻類などが船に付着しないようにする機能性塗料となります。
  私は船舶用塗料を販売する際の技術サポートをするチームに所属しており、現場で実際に施工する際に造船所などの現場へ出向き、 化学的・塗料機能面の知見による技術アドバイスなどのユーザー対応を行っています。
-はい。

メインとなる業務として「防汚塗料」の対応が多いものとなります。 防汚塗料というのは徐々に表面から海に溶けていくように設計しているものになります。
この溶けていく塗料というのは、塗料としてはとても珍しいものです。 なぜ溶けるようにするかと言いますと、その対象の海棲生物が嫌う成分(防汚剤)を塗膜からゆっくりと放出させ、その生物の付着を防ぎます。
この技術は、塗膜が溶ける速度をコントロールすることが重要です。 例えば塗膜が一気に溶けてしまうと、すべて溶けきった際にフジツボなどの生物が付着してしまいます。
逆に、塗膜が溶けなさすぎると、放出される防汚剤の量が少なくなり、 生物が『これくらいならば耐えられる』という状況になり、フジツボなどが付着してしまいます。
この速度コントロールをすることで、生物を殺すのではなく、嫌がって逃げるというような設計にしています。


-そうなのですね。

そしてその設計が、稀にミスマッチしたものが選択、塗装されてしまうことがあります。
例えば高速船向けに設計した溶けにくい塗料を、ずっと停泊している船に塗りますと、フジツボ付着を防ぐことが出来ません。 その逆、よく溶ける塗料をよく高速・高稼働船に塗ってしまった場合、例えば1年間の保持期間を狙っていたものが、半年で溶けきってしまう。
となると、今度は船底には防汚塗料が無くなってしまい、フジツボが付着してしまいます。
このような事が起こった場合、お客様としては不満足な結果、いわゆるクレームとなります。
それを未然に防ぐことが我々のチームの職務・役割で、起こってしまった場合の対応も重要な業務となります。

とても専門性の高いお仕事に携わられていらっしゃるのですね。

「船底塗料」の適用範囲は非常に狭いものですが、海上を就航する一般商船から漁船まで、様々な船舶に塗装されます。
また船舶は大きく分けると、国内就航に限定される「内航船」と、海外を行き来する「外航船」という2種類があります。
「内航船」はフェリー、貨物船、タンカーなど、「外航船」は大型のタンカーなどがあります。 大型の原油タンカーとなると、全長400メーターに迫るものもあります。
また大型船としては、特に最近よく話題になっていたコンテナ船が挙げられます。 約12メーターのコンテナを、2000年代には8000個~1万個まで積載可能というのが最大だったのが、 現在では1万5000個~2万個まで積載可能な大型船が建造されており、そういった大型船舶などにも塗装されています。

かなり大きな船も扱われていると。

はい、ただ先ほどお話ししたように、そのような大型船は、24時間の稼働率が約90%という数値のものが多く、 ほぼ止まらず動き続けるような就航形態となります。
それに対して沿岸域の漁船などは高稼働な物件であっても、日中(日の出から日の入りまで)稼働、 土日は休むとなると、就航率としては50%以下となります。
ですので、もし漁船に適合する設計のよく溶ける品質の塗料を、 高稼働の大型タンカーなどに塗装すると、すぐに溶けきってしまいます。 そういったミスマッチをなくしていくということも、我々の大事な仕事となります。

非常に重要で、奥が深いお仕事であることが伝わってきました。

2.水中ドローンの活用について

 


<関西ペイントマリン株式会社 島田様 CHASINGM2とともに>


ーでは続いて、そんなお仕事の中で、水中ドローンをどのように活用されているかという所をお伺いしていきたいと思います。

 

内航船の場合、多くは1~2年ごとにドックに入れて補修作業を行います。 その際に船体を乾燥させた後、防汚塗料を塗り重ねていくという工程があります。
そして先程お話しした塗料のミスマッチが発生した場合、例えば低稼働の船に溶けるのが遅い塗料を塗ってしまっていたとすると、 防汚塗料が残っている状態でフジツボなどが付着していることが想定されます。

ーはい。

これまでフジツボの付着は、実際ドックに入れて船体が乾かないと確認できませんでした。
しかしドック期間中に「塗膜の溶けが遅いですね。塗料の種類を変えましょう」となると、 お客様への提案や塗料の準備など、どうしても対応が一歩遅くなってしまいます。
従来は、ドックに入れる前の状態を確認しようと思ったら、水面から目視で見える範囲で判断するか、 もしくはダイバーさんに依頼して確認するしか方法がありませんでした。
しかし水中ドローンというツールの登場で、例えば1年でドックに入れる予定の船を10か月経過の段階、 もしくは生物付着が顕著な夏を越えたタイミングで、水中ドローンで調査をすると、実際にどれだけ汚れているかというのが把握できるということになります。
それで「ちょっと溶けが遅く、フジツボが付着しています」となれば、 ドックの前に「それではよく溶ける、別の製品に変更しましょう。」というご提案ができるようになってくるので、非常に効率的になりました。
また、お客様から問い合わせを頂いた際や、塗膜に不具合が発生した場合などには、 現況をいち早く水中ドローンで確認し、スピーディーに資料を作成して報告を行い、その後の対策をご提案することが可能です。

よくわかりました。水中ドローンをうまく活用されていますね。稼働率としては相当高く、mizubiyoriの講習受講者様の中で一番活用されているのではと思います。

 

そうですね。関西ペイントマリンは、尼崎の技術本部のほかに、 営業所は東京、北海道、尾道、今治、福岡、大分にあります。現在、各拠点に1台ずつ水中ドローンを配備しています。 日本中どこでも対応できるように、「安全潜航操縦士認定を各所で一人ずつは取っていこう」という方針で、 講習の受講とライセンス取得を進めています。

 

3.水中ドローンが優れている点

 

<導入から2年とは思えないほどキレイに維持されている機体>

 

 

-では続いて水中ドローンが優れている点をお話いただけますでしょうか。

はい。まず一番大きいなと思うのは、コストパフォーマンスです。 潜水士を手配する事に対してのコストの差というのは非常に大きいです。
もう一点は即応性ですね。潜水会社に依頼しての調査と比較して、手元に水中ドローンがある状態から、 海上保安庁などへの申請さえ行えば、自分たちですぐ対応できるというのが大きいですね。
また、潜水士に確認内容を伝えて依頼するのではなく、自分たちで確認したい箇所を調査できることも大きなメリットと感じます。
それと通常の船体調査は、船が岸壁にとまっている状態が多いです。
狭小な場所での作業、岸壁と船体の間、 例えば50センチの隙間など、もし潜水士が作業するとなると危険であり、困難です。
そういった箇所まで調査可能というのは、非常に助かるポイントだと考えます。


ーありがとうございます。流石現場での活用がすすんでいらっしゃるので、水中ドローンの魅力のポイントをよく押さえて下さっていますね。

 

おまけ1 島田様の水中ドローン運用TIPS画像  

こちらの各アイデアはメーカー推奨ではない点ご理解頂き、採用される場合は自己責任で行って下さい。

<モーターごとにL/Rのシールを貼り付けメンテナンス性を向上>


<テザーケーブルのコネクタ根本部分をシリコンコーキングで補強>


<テザーケーブルをフックではなく、バッテリーのリングにカラビナで止めている>

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